科 目 名:国際協力論A/Ⅰ
テ ー マ:途上国の飢餓人口削減及び農業開発に寄与した国連による国際協力
実 施 日:2024年5月28日(火)
担当教員:政経学部准教授 伊藤 紀子
講 師:小泉 達治 氏(農林水産省農林水産政策研究所 上席主任研究官)
活動内容:
講義では、元国連職員・国際機関職員としての現場経験を踏まえ、SDGsにおいて飢餓をゼロとすることが目指されているにもかかわらず、特にアフリカなどで飢餓が解消されていないことの背景が取り上げられた。国連の国際協力の中でも、開発途上国の農業開発への協力の経緯や成果に注目し、「途上国の飢餓人口削減及び農業開発に寄与した国連による国際協力」について講演をいただいた。
近年の途上国では、飢餓や栄養不足に加え、肥満人口の増加も起きている。商品経済化が進む中で、購入力不足、交換権限の悪化(人々の財の所有関係の変化や、食料が分配されないことなど)によって、飢餓が起こりうるという説明がなされた。2000年代初頭には中国の経済成長などにより栄養不足人口が減り、国際社会の飢餓に対する取組の優先順位が下がった。こうした油断が、近年の飢餓人口の増加につながったと考えられている。紛争・戦争により食料貿易が影響を受け、飢餓を引き起こしてきた。また、FAO(国際連合食糧農業機関)による飢餓人口削減に向けた取り組みとして、農業技術の伝授を行っている。「緑の革命」により、アジアの農業技術革新、コメの収量増加が進んだ経緯や途上国での経験を説明いただいた。さらに需給見通しから、様々なシナリオに基づいた分析を行い世界のフードセキュリティの状況を早期警戒的に把握し、迅速な対応を講じるためにも重要であること、現状のフードセキュリティの状況に油断することなくリスクに備える重要性、途上国の飢餓を減らすために貧困の解消、所得の向上、分配を促す重要性も指摘していただいた。