改革改善の取組

Improvement Reform

  • 実践教育

2024.12.9

実践的な職業教育の充実
-インフラ開発(応用)-

科 目 名:インフラ開発(応用)
テ ー マ:開発プロジェクトの環境社会配慮
実 施 日:2024年11月7日(木)
担当教員:国際学部教授 徳永 達己
講  師:黒木 浩則 氏、高橋 水希 氏 (株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル社 (OCG)道路交通事業部 道路計画部)

活動内容:
開発コンサルタント会社である株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル社(OCG)道路計画部の黒木浩則、高橋水希両氏より、社会インフラ開発に携わる職業の一つである開発コンサルタントの役割・業務、国際協力プロジェクトにおける環境社会配慮(環境アセスメント)説明を行い、更に理解を深めるため、仮想のインフラプロジェクトの住民説明会の事業者側と住民側に分かれ、事業説明会における質問(意見)と回答についてロールプレイングを行った。

主な内容は以下の通りである。
I. 環境社会配慮の定義とその必要性
環境社会配慮という言葉はJICA環境社会配慮ガイドラインで定義されている言葉であり、具体的には自然・社会・生活環境分野の30項目についてのプロジェクトがもたらす影響を最小化する事である。また、JICAが対象国に環境社会配慮ガイドラインを遵守する事を求める理由について説明した。

II. プロジェクトサイクル毎の開発コンサルタントの役割
ODA(特にインフラ整備)に携わる開発コンサルタントの環境社会配慮分野の役割・業務について、プロジェクトサイクル(上位計画段階・実施可能性段階・設計段階・建設段階・維持管理段階)毎の手段(戦略的環境アセスメント(SEA)、環境アセスメント(EIA:環境モニタリング・環境緩和策含む)の概略を説明し、どのような段階で何が求められるのか説明を行った。

III. 環境アセスメントの具体的な内容と事例
環境アセスメント(EIA)の具体的なプロセスとして、①スクリーニング、②スコーピング、③現地ステークホルダー協議、④現地調査・影響予測・評価・環境緩和策の策定・環境モニタリング計画立案、⑤現地ステークホルダー協議、⑥EIA報告書作成、⑦工事中のモニタリング実施であることを理解した。
また、EIAの活動において、30項目それぞれの影響の程度から必要な調査を計画する「スコーピング」が最も重要なステップであることを理解した。

IV. 住民移転・用地取得に関する説明
インフラ整備事業で課題となる用地取得や住民移転について必要な対応や調査プロセスについて説明した。

V. キャリア形成について
開発コンサルタントは様々な分野の専門家がおり、かつては理系出身者が活躍した分野であったが、近年はインクルージョンに対する世界的な理解が進み、経済、文化、平和構築等の文系のコンサルタントも必要とされていることを説明し、外国の文化や言語を習得すれば職業として選択肢になることを説明した。

VI. グループディスカッション
環境アセスメントの役割として住民との合意形成があり、仮想の道路事業について事業者側と住民側にグループ編成を行い、議論を行った。
【演習課題】
● プロジェクト実施地域:タンザニア国地方都市
● 事業内容:道路改良事業(一部線形ルート変更、道路拡幅、舗装)
● 事業の特徴:対象ルートは、自然国立公園近傍に位置し、イスラム・キリスト・少数民族等の住民がいる集落を通過する。
● ロールプレイング課題:環境社会上の問題課題意見(住民側)と事業者側の見解(課題に対する解決策の提示)

3~4名毎を2グループに分割し、それぞれグループ内ディスカッションを想定問答対応のため30分程度行い、その後に住民側の質問意見(●●の影響をどのように抑えるか?)に対して事業者側がその解決方策を提案する形で実施した。

VII.所感及び出席した学生へのメッセージ
短期間でODAのインフラのプロジェクトサイクルや環境社会配慮の枠組みを理解するのは非常に困難だったことと思いますが、既に基本的なODAの知識は多少合ったため、スムーズにグループワークやロールプレイングへ対応できたと思います。

住民側はしっかりと解決策まで見込んだ形で事業者側への質問や要求が出せていました、また事業者側グループは、道路構造の代替案検討まで提示できており、我々の想定を超えた提案まで出てきて驚かされました。

現在、社会すべての分野でSDGsを目指した取組が行われており、今回の環境と社会への配慮を行うという視点は、今後の皆さんの職業においても考慮されるべき重要な切り口となります。特に環境の負の影響については、影響を受ける人を自分のみの基準で考えるのではなく、最も立場の弱い人(高齢者、障害者、ジェンダー等)に置き換え、想像力を豊かにして考えると、思い当たるところがたくさん出てくることがわかったと思います。

開発コンサルタントでは、皆さんのような文系出身者が多く活躍されており、今回の授業を通して皆さんの職業選択の一つの候補として検討いただくと幸いです。

今後皆さんは、論文作成や就活等、様々な新しい課題に直面していくこととなりますが、それまでに学習した検討プロセス等にあてはめて考えると理解や解決できることもたくさんありますので、今回の演習を通してそのような考え方を思い出していただくと幸いです。

プロジェクトサイクルと環境アセスメントとの関係の説明 講師:黒木浩則
仮想住民会議のロールプレイング(事業者側-住民側)の様子Spain Japan market SL
社会環境分野の説明(住民移転) 講師:高橋水希

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