科 目 名: インフラ開発
テ ー マ: 開発プロジェクトの環境社会配慮
実 施 日:2025年10月9日(木)
担当教員:国際学部教授 徳永 達己
講 師:黒木 浩則氏、高橋 水希氏(株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル社(OCG)
道路交通事業部 道路計画部)
活動内容:
開発コンサルタント会社(株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル社(OCG))道路計画部の黒木浩則、高橋水希の両氏より、途上国における社会インフラ開発に携わる職業の一つである開発コンサルタントの役割・業務、国際協力プロジェクトにおける環境社会配慮(環境アセスメント)やインフラ開発に伴って発生する住民移転についての説明を行い、さらに理解を深めるため、仮想のインフラプロジェクト(タンザニアの道路事業)を題材に4つのグループを形成し、それぞれ主な環境影響とその緩和策について議論と発表を行いました。
主な内容は以下の通りです。
I 開発(建設コンサルタント)の業務について
開発コンサルタントがインフラ建設においてどのような役割を担っているか説明を行い、理解を深めました。
II 環境アセスメントの対象項目
環境社会配慮という言葉はJICA環境社会配慮ガイドラインで定義されている言葉であり、具体的には自然・社会・公害分野の30項目についてのプロジェクトがもたらす影響を予測し、最小化する事です。また、JICAが対象国に環境社会配慮ガイドラインを遵守する事を求める理由について説明を行いました。
III. プロジェクトサイクル毎の開発コンサルタントの役割
ODA(特にインフラ整備)に携わる開発コンサルタントの環境社会配慮分野の役割・業務について、プロジェクトサイクル(上位計画段階・実施可能性段階・設計段階・建設段階・維持管理段階)毎の手段(戦略的環境アセスメント(SEA)、環境アセスメント(EIA:環境モニタリング・環境緩和策含む)の概略を説明し、どのような段階で何が求められるのか説明を行いました。
IV. 環境アセスメントの具体的な内容と事例
環境アセスメント(EIA)の具体的なプロセスとして、①スクリーニング、②スコーピング、③現地ステークホルダー協議、④現地調査・影響予測・評価・環境緩和策の策定・環境モニタリング計画立案、⑤現地ステークホルダー協議、⑥EIA報告書作成、⑦工事中のモニタリング実施であることを説明し、流れについて説明を行いました。
また、EIAの活動において、30項目それぞれの項目に対して事業の活動が影響するかを分析し、どのような調査を行うかを決める、いわゆる「スコーピング」が最も重要なステップであることについて理解を深めました。
V. 住民移転・用地取得に関する説明
インフラ整備事業で課題となる用地取得や住民移転について必要な対応および調査プロセスを説明しました。補償方針について被影響者が合意しないと事業が進まなくなる事について説明し、理解しました。
VI. キャリア形成について
開発コンサルタントは様々な分野の専門家がおり、かつては理系出身者が活躍した分野でしたが、近年は経済、文化、平和構築等の文系のコンサルタントも必要とされています。文系の学生であっても外国の文化や言語を修得すれば職業として選択肢になることを説明し理解しました。
VII. グループディスカッション(環境アセスメントにおけるスコーピング)
仮想のプロジェクト(タンザニアの道路整備事業)について、主な負の影響とその緩和策について4つのグループに分かれてインターネット等を用いて調べ、それぞれグループ発表を行いました。
参加者の1-2割が外国人学生であったためグループ内の議論は、日本語及び英語で行われ、プレゼンテーションも一部は英語を用いて行われました。
【演習課題】
● プロジェクト実施地域:タンザニア国地方都市
● 事業内容:道路改良事業(一部線形ルート変更、道路拡幅、舗装)
● 事業の特徴:対象ルートは、自然国立公園近傍に位置し、イスラム・キリスト・少数民族等の住民がいる集落を通過する。
Ⅷ.所感及び出席した学生へのメッセージ
後半にグループワークを控えていたため、短期間で環境アセスメントの仕組みや住民移転の流れを理解するのは非常に困難だったことと思いますが、スムーズにグループワークとプレゼンテーションへ対応できたと思います。
特に留学生が10人中3-4人いたグループもありましたが、そのような環境でもうまくコミュニケーションを行い、影響と緩和策をうまくまとめてくれました。
また、講義終了時には、将来の職業として開発コンサルタントに興味があるという方が6-7人から多くの質問を頂きました。その多くが「文系であっても開発コンサルタントにはなれるか?」また、「どのような学習を今後行うべきか?」というような具体的な質問が多く、国際協力分野に関する興味を持たれている方が多い印象で大変喜ばしく感じました。
開発コンサルタントは、現在は理系のみならず、皆さんのような文系出身者が多く活躍されており、今回の授業を通して皆さんの職業選択の一つの候補として検討いただくと幸いです。
今後皆さんは、論文作成や就活等、様々な新しい課題に直面していくこととなりますが、それまでに学習した検討プロセス等にあてはめて考えると理解や解決できることもたくさんあります。今回の演習を通して是非そのような考え方を思い出していただくと幸いです。


