改革改善の取組

Improvement Reform

  • 実践教育

2022.10.27

実践的な職業教育の充実
ーインフラ開発(応用)ー

科 目 名:インフラ開発(応用)
テ ー マ:開発プロジェクトの環境社会配慮
実 施 日:10月5日
担当教員:徳永 達己
活動内容:
開発コンサルタント会社である株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル社(OCG)道路計画部の黒木浩則、高橋水希両氏より、社会インフラ開発に携わる職業の一つである開発コンサルタントの役割・業務、国際協力プロジェクトにおける環境社会配慮(環境アセスメント)の説明が行われ、更に理解を深めるため、グループディスカッションを通じて環境アセスメントに関するスコーピングの演習を行いました。

主な内容は以下の通りです。
I. 環境社会配慮の定義とその必要性
環境社会配慮という言葉はJICA環境社会配慮ガイドラインで定義されている言葉であり、具体的には自然・社会・生活環境分野の30項目についての影響を最小化する事です。また、JICAが対象国に環境社会配慮ガイドラインを遵守する事を求める理由について説明されました。

II. プロジェクトサイクル毎の開発コンサルタントの役割
ODA(特にインフラ整備)に携わる開発コンサルタントの環境社会配慮分野の役割・業務について、プロジェクトサイクル(上位計画段階・実施可能性段階・設計段階・建設段階・維持管理段階)毎の手段(戦略的環境アセスメント(SEA)、環境アセスメント(EIA:環境モニタリング・環境緩和策含む)の概略が説明され、どのような段階で何が求められるのか説明が行われました。

III. 環境アセスメントの具体的な内容と事例
環境アセスメント(EIA)の具体的なプロセスとして、①スクリーニング、②スコーピング、③現地ステークホルダー協議、④現地調査・影響予測・評価・環境緩和策の策定・環境モニタリング計画立案、⑤現地ステークホルダー協議、⑥EIA報告書作成、⑦工事中のモニタリング実施であることを理解しました。
また、EIAの活動において、30項目それぞれの影響の程度から必要な調査を計画する「スコーピング」が最も重要なステップであることを理解しました。

IV. 住民移転・用地取得に関する説明
インフラ整備事業で課題となる用地取得や住民移転について必要な対応や調査プロセスについて説明されました。

V. キャリア形成について
開発コンサルタントは様々な分野の専門家がおり、文系からも例に漏れないことを説明し、外国の文化や言語を習得すれば選択肢になる職業であることが説明されました。

VI. グループディスカッション
環境アセスメントにおいて最も重要な工程である「スコーピング」について、タンザニア国の地方都市における道路改良事業を例として、グループ毎にディスカッションを行い、主な課題とそれを解決する方策について発表が行われました。

【演習課題】
● プロジェクト実施地域:タンザニア国地方都市
● 事業内容:道路改良事業(一部線形ルート変更、道路拡幅、舗装)
● 課題:対象ルートは、自然国立公園近傍に位置し、イスラム・キリスト・少数民族等の住民がいる集落を通過する。

6~7名毎を2グループに分割し、ディスカッションを30分程度行いそれぞれ発表が行われました。
各グループから、自然環境や社会環境面に関する想定される負の影響やその主な対応策について発表がなされました。

VII.所感及び出席した学生へのメッセージ
短時間で、社会インフラ事業に関する自然環境や社会環境の分析項目やプロセスを理解する事は非常に困難だったかと思います。
しかしながら、「環境」はSDGsにおいて関連する項目も多数あり、今後の皆さんの職業においても考慮されるべき重要な切り口となります。特に環境の負の影響については、影響を受ける人を自分のみの基準で考えるのではなく、最も立場の弱い人(高齢者、障害者、ジェンダー等)に置き換え、想像力を豊かにして考えると、思い当たるところがたくさん出てくることがわかったと思います。
今後皆さんは、様々な新しい課題に直面していくこととなりますが、それまでに学習した検討プロセス等にあてはめて考えると理解できることもたくさんありますので、今回の演習を通してそのような考え方・経験を身につけていただければ幸いです。
また、環境社会配慮は文系出身でも活躍できる専門分野の一つですので、将来の職業選択の点でも興味をもっていただけるとよいと思います。
また、留学されている方からも英語でプレゼンテーションがありました。英語は日本を除けばほぼ国際的な言語となっているので、遠慮せずどんどん英語を使って発表頂けると良いと思います。

授業風景-1:プロジェクトサイクルと環境アセスメントとの関係の説明 講師:黒木浩則
授業風景-2:社会環境分野の説明(住民移転) 講師:高橋水希
授業風景3:グループワーク結果の発表の様子(留学生も英語で発表)

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