改革改善の取組

Improvement Reform

  • 実践教育

2023.10.17

実践的な職業教育の充実
-インフラ開発(応用)-

科 目 名:インフラ開発(応用)
テ ー マ:開発プロジェクトの環境社会配慮
実 施 日:2023年10月5日(木)
担当教員:国際学部教授 徳永 達己 
講  師:黒木 浩則氏(株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル社(OCG) 道路交通事業部 道路計画部)
活動内容:
開発コンサルタント会社である株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル社(OCG)道路計画部の黒木浩則、高橋水希両氏より、社会インフラ開発に携わる職業の一つである開発コンサルタントの役割・業務、国際協力プロジェクトにおける環境社会配慮(環境アセスメント及び住民移転)説明を行い、更に理解を深めるため、グループディスカッションを通じて環境アセスメントの事例(アフリカの道路整備)に関するスコーピングの演習を行いました。

主な内容は以下の通りです。

I. 環境社会配慮の定義とその必要性
環境社会配慮という言葉はJICA環境社会配慮ガイドラインで定義されている言葉であり、具体的には自然・社会・生活環境分野の30項目についての影響を予測し、影響が発生する場合はそれらを最小化する事であることを解説しました。

II. プロジェクトサイクル毎の環境社会配慮の手段
ODA(特にインフラ整備)に携わる開発コンサルタントの環境社会配慮分野の役割・業務について、プロジェクトサイクル(上位計画段階・実施可能性段階・設計段階・建設段階・維持管理段階)毎の手段(戦略的環境アセスメント(SEA)、環境アセスメント(EIA:環境モニタリング・環境緩和策含む)の概略を説明し、どのような段階で何が求められるのか、グループワークを通じて理解を深めました。

III. 環境アセスメントの具体的な内容と事例
環境アセスメント(EIA)の具体的なプロセスとして、①スクリーニング、②スコーピング、③現地ステークホルダー協議、④現地調査・影響予測・評価・環境緩和策の策定・環境モニタリング計画立案、⑤現地ステークホルダー協議、⑥EIA報告書作成、⑦工事中のモニタリング実施であることを説明し、学生はそれを理解しました。
また、EIAの活動において、30項目それぞれの影響の程度から必要な調査を計画する「スコーピング」が最も重要なステップであることを理解しました。

またスコーピングは最も重要なステップである事から、多角的(複数の専門家)により検証される事が重要であることを説明しました。
プロジェクトの現場に専門家として派遣された場合、どのような影響を考慮して対策を考えるか、現地写真を見つつ、クイズ形式で学生側より発表をしました。

IV. 住民移転・用地取得に関する説明
インフラ整備事業で課題となる用地取得や住民移転について必要な対応や調査プロセスについて説明しました。住民移転・用地取得は、特にインフラ事業では最悪事業中止になるような大きな問題になることから、慎重な調査やコミュニケーションが必要です。

V. キャリア形成について
開発コンサルタントは様々な分野の専門家がおり、英語や専門技術を習得すれば文系出身であっても活躍できる職業として選択肢になりうることを説明しました。

VI. グループディスカッション
環境アセスメントにおいて最も重要な工程である「スコーピング」について、タンザニア国の地方都市における道路改良事業を例として、グループ毎にディスカッションを行い、主な課題とそれを解決する方策について発表が行われました。
【演習課題】
● プロジェクト実施地域:タンザニア国地方都市
● 事業内容:道路改良事業(一部線形ルート変更、道路拡幅、舗装)
● 課題:対象ルートは、自然国立公園近傍に位置し、イスラム・キリスト・少数民族等の住民がいる集落を通過する。

4名を1グループとして、ディスカッションを30分程度行い、代表者を決定して発表が行われました。社会的影響、自然環境面の影響を考慮した緩和策の発表のみならず、ルート代替案の提案も学生側からなされました。

VII.講師による所感及び出席した学生へのメッセージ
環境アセスメントという言葉は、知っていても、その手順や考え方に触れるのは初めての経験だったと思います。しかしながら、写真を見ての発表やグループディスカッションでは、これまでの授業やゼミで培った知識や経験から、国際学部の学生さんならではの、現地の文化を考慮した意見や発表があったと思います。
また、受講生の皆さん2年生であっても、どなたを指名しても、自分の考えをまとめて素早く話せることに驚かされました。これは普段のゼミにおいて、プレゼンする訓練が十分に積まれているのでしょう。
今回の講義では、短時間で環境アセスメントを理解するのは難しかったかと思いますが、影響を受ける人を自分のみの基準で考えるのではなく、多角的な視点を持ち、最も立場の弱い人(高齢者、障害者、ジェンダー等)に置き換え、想像力を豊かにして考えると、思い当たるところがたくさん出てくることがわかったと思います。
今後皆さんは、今後、様々な新しい課題に直面していくこととなりますが、それまでに学習した検討プロセス等にあてはめて考えると課題を整理することもたくさんありますので、今回の演習を通してそのような考え方・経験を身につけていただければ幸いです。
また、環境社会配慮は文系出身でも活躍できる専門分野の一つですので、将来の職業選択の点でも興味をもっていただけると良いと思います。

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